一の糸~追憶の契り~

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************ 「私ね、3才の頃に死にかけたのよ。」 金曜日の居酒屋は、ストレスから仮釈放された企業戦士たちのオアシスだ。 戦士ってほどじゃないけど私、雪村縁も会社員。金曜日は大好きだ。 大学卒業後に入社した損害保険会社に勤めて、はや4年。 月の給料は多くはないけど、ウチの会社はボーナスがいい。 女ひとりでだって充分に食べていける。 だから、仕事に大きな不満はない。 小さな不満なら腐るほどあるけど、この暗いご時世、安定した仕事があるだけ幸せだ。 同じ一般職として入社した同期は3分の1が寿退社した。 学生時代の友人たちも、ちらほら結婚・出産してる。 ご祝儀貧乏、26才・・・。 焦りがないと言えば嘘になる。 すみません、今、見栄をはりました。 雪村縁、かなり、焦っております。 その焦りを全て呑み干してしまおうと、本日も芋焼酎をあおっているわけです。 「縁先ぱーい。それ何回も聞きましたよぉ。酔うとその話ばっかり!」 赤い顔をした一年後輩の雅美が、うんざりした様子でこう言った。 「いいや!私は話したことないよ!たとえ話してたとしても、何回だって言うね! 私に男運がないのは、死にかけたせいなのよぉぉっ! あ、お兄さん!芋ロックおかわりくらさい。」 ちょうど通りかかったバイトの男の子を捕まえて、私はおかわりを申し出た。
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