第1章「火の星」

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「村が……」  大火事だった。だが、単なる火事ではなかった。丘の上からでも眼のいいラウナには、はっきりと村の様子を見てとることができた。  賊だ。賊が村を襲っていたのだ。  ラウナは駆けだしていた。村にむかってわき目もふらず一直線に。  何ということだろう。バサンたち四人の戦士たちが村を離れている間に襲われるとは――。  人口二〇〇人ほどの小さな村に、それほど多くの戦士がいるわけではない。村に残った戦士は何人かいるとはいえ、四人もの抜けは大きい。賊に襲われたときには戦士全員でもって村を護るなければならない。ラウナも戦士として村を護る義務を負っていた。  頭に血がのぼった。心臓が暴れていた。燃える村に必死になって急いだ。  それほど高い丘ではなかった。ラウナが走りおりるのに、それほど時間はかからなかった。
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