第1章「火の星」

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「くそぉ……。おまえらぁ……!」  ラウナはすさまじい怒りと闘気で相手を圧倒した。さらに二人を血の海に沈めた。  もはや正気ではなかった。鬼となっていた。このまま怒りにまかせて人を殺めていったら、二度と正気には戻れないような、そんな形相だった。 「ラウナ!」  が、そのとき、どこからか彼女を呼ぶ声がした。その声が、一気にラウナを狂気から引き戻した。  ハッとして振り向くと、村に残って賊と戦っていた男のひとりが駆けてくる。  戦士ロズクだ。ラウナよりも二つ年上のまだ若い戦士だった。 「ロズク!」  彼は血まみれの剣を片手にラウナの傍らに駆けよって来た。 「すまん、不意をつかれた」  息を切らしながら言う。
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