第1章「火の星」

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「これ以上は無理か……」  ロズクがつぶやいた。  村人の死体を回収するのは不可能だった。置き去りにしていかなければならないことに心が痛んだ。 「そろそろおれたちも山へ逃がれよう」  とロズク。  ラウナは口惜しくてたまらなかったが、事実は変えようもない。ロズクに従うしかなさそうだった。 「しかたないか……」  火はますます燃えひろがり、周りは火の海だ。賊は、確認はできないが、まだかなりいるはずだ。火のない場所を押さえられたら、逃げられなくなる。  それに、村の出口を賊が固めているかもしれない、とロズク。  二人は村の外へ向かった。できる限りのことはした。外へ誘導して、もう山へ逃げこんでいるはずの村人たちを護らなければならない。山をあとから下りてきたバサンたちの姿は見ていないが、おそらく村人たちといっしょにいるだろう。
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