第1章「火の星」

6/28
前へ
/124ページ
次へ
「これが、きのう天から落ちてきたやつか……」  ラウナがつぶやいた。  四人ともが、そうにちがいないとは思っていたが、それでも疑わざるをえなかった。この状況で、こんな異質なものを見たら、誰だってそれが天から落ちてきたものの正体だと思うだろう。しかし――。 「おそらくな」  第一発見者のターズが言った。 「だが、小さいぞ……」  とつぶやいたのは戦士ボエイだった。  ターズと同じ歳だが、ターズとは対照的にどっしりとした体つきだ。髭も濃く、頬の刀傷は前回の他部族との戦いでできた戦傷だった。そのためターズと同じ歳には見えないほど、その顔には凄みがある。  ボエイが言ったように、たしかに小さかった。人の頭ぐらいしかない。  だからそんなものが火を吹いて天から落ちてきたからといって、空を横切ったときに、あんなに巨大に見えるものなのだろうかという疑問が当然でてくる。それとも大きく見えただけなのか。あるいは、星の中心部だけが残り、あとの部分は燃えつきたか飛び散ったか。
/124ページ

最初のコメントを投稿しよう!

30人が本棚に入れています
本棚に追加