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店の中に戻り、残っている洗濯物を取り出していると店の入口が開く音がした。
「いらっしゃいませ~」
反射的に答えて店先を見ると、そこには植木鉢を抱えた女の子が立っていた。
「相変わらずの営業スマイルね」
「何だ、恵美か」
陽一はあからさまにガッカリして見せた。
「何だはないでしょっ何だは!」
そう言って恵美こと陽一の幼なじみの加納恵美は、店のカウンターの上に植木鉢を音を立てて置いた。
「はい!今週の分!」
持ってきた鉢には桜草が球状につぼみをつけていた。
「ありがとう、助かるよ」
陽一はカウンターの下から花の終わった植木鉢を出す。
「仕事だから来てあげてるの!」
陽一から植木鉢を受け取り、恵美はわざとらしく胸を張る。そのエプロンの胸には『Fflower』。
恵美は花屋の娘で、この花の鉢はこの店とのレンタルフラワーなのだが、少々口実めいている。陽一は知らない…親に頼み込んで太陽クリーニングの花の手入れを恵美が担当している事を。
「また、よろしく頼むよ」
陽一が笑顔を向けると、恵美はカチンと固まった。
「し、仕事だから!また、お花を持って来てあげるわ!じゃあねっ」
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