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博士はプロジェクターを使い官僚に見えるようにして、エックス線を通して撮影した写真を見せた。
「中の構造は明かに地球産の木の実とは違っています。しかし、各専門家の意見をまとめたところ、植物に類似する部位が幾つかあることが確認されました」
博士が言うように、木の実の中身は異形であることは素人でる官僚でも分かる。けれど、その一つ一つが植物が生長するのに必要なものを兼ねていた。初めは苦笑いを浮かべていた官僚も博士の説明を聞いているうちに真剣な顔になった。
「なるほど、あれが木の実であり、地球のモノでないという仮説は分かった。しかるに、その木の実はどうなのか?」
「どうなのかと言いますと?」
「有効性があるかどうかだ。もし、食べられる、利用できる木の実ならば、培養技術を使い増産すべきだ」
地球外の木の実であるからには、それを政治的なアクションとして利用しない手はない。活かせるならば、活かして外国に優越をつけたいと思うのは、誰もが同じであった。
「それなのですが・・・」
「どうした?何か問題でもあるのか?」
「こちらをご覧ください。木の実の成分表です」
博士は官僚に木の実の成分をまとめた用紙を手渡した。もっとも、これは専門家が書いた資料であり、官僚には分からない内容ばかりだ。
「結論から申し上げますと、木の実は高価な栄養に飛び抜けています。さらに、大気圏を抜けてきたにも関わらず、生命活動を続けているらしく、植えれば生えてくることでしょう」
「素晴らしいじゃないか。そんなに高い栄養価を持っているなら、きっと新しい分野の役に立つはずだ。植えて量産しろ」
「それが、そう、上手くいきません」
「上手くいかないとは、どういう意味だ?」
「木の実の栄養価は高いのですが、問題は人間が取り入れることができないという点にあります」
「人間が取り入れることができないだと?」
「はい。木の実から採取した少量の液体を動物や被験者に呑ませてみたのですが、誰もが異常をきたしてしまったのです。呼吸困難や心不全を引き起こし死に至りました。どうやら、未知の毒物が木の実には含まれていたらしく、人体に有害であると判断されたのです」
「何ということだ」
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