危険な実

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 博士の報告を受け、官僚は呆れた。成分表では高い栄養価を誇っているというのに、人間や動物に使うことは不可能なのだ。それでは、利用のしようがない。栄養というのは、身体に取り入れられて初めて効果を発揮するものであり、そのまま放置しておくことは宝の持ち腐れだ。 「利用できないのならば、持っていても仕方あるまい。処分しなさい」 「それなのですが・・・」 「まだ、問題でもあるのか?」 「はい。そう言われると思い、私達は先手を打って木の実を処分しようとしました。ところが、どうしても処分できなのです」 「何だと?」 「最初は焼却処分しようとしました。ところが、火の中に投じた途端に、発芽を起こしてしまい。どんなに温度を上げても焼けることがありませんでした。このままでは、成長が促されると判断し火の中から取りだしました。その際、葉の成分を分析しましたが、結果も同じでした。栄養価が高くても、私達が口にできる代物ではありません。放っておくと成長してしまうかもしれないので、冷凍庫の中で完全に凍結させ、処分しようともしましたが、それも無駄でした。木の実は冷凍庫の中でも生長したのです。私達は、ありとあらゆる手段で、木の実を処分しようとしました。レーザーを照射してみたり、砕こうとしてみたり、各種薬品をかけてみたり、しかし、どれも結果はダメでした。どんなに砕こうとしても、多少の傷こそ付きますが、すぐに治ってしまいます。薬品も同じです、全く受けつけようとしません。それどころか、日増しに成長して芽は青々とした葉を茂らせ、幹も太くなりだしました。最近、国内で核実験が行われたのを覚えていますか?」 「ああ。覚えている」  官僚は思い出すのも嫌な気分であった。何の知らせもなく、強行された核実験。これには、各国が激怒し批難された。目的は不明であったが、その一件で、官僚は立場が危うくなりかけた。 「あれは、核実験ではありません。核の真下に例の木の実を置いていたのです。いくら、地球外の木の実でも多量の放射線と核爆発を受ければタダでは済まないはず。そう思い、軍に無茶を言って実験を強行してもらったのです」 「あの実験は君の指示だったのか」
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