この絆を例えるなら

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 部活が終わり、いつも場所で集まり、 いつものように部屋へ向かう。  周りからの目は尊敬や好意が向けられ、けして嫌なものではないのだが、これから起こる惨劇を目の当たりにしたらさぞさし幻滅されるだろうと、この場だけは笑顔を振り撒き挨拶を交わしている高等部3年喧嘩部部長夏目帝は既に自分の部屋に帰りたい気持ちで押し潰されそうになっていた。  高等部3年執行部副部長響康介と高等部3年執行部会計永峯柳斗は自分の兄、執行部部長を勤める夏目葉瑠の側近と言える大事な人。その人達の1歩後ろを歩いているのは、今後の予定の打ち合わせと格好をつけた、拷問を受ける為。  それを察した本能は帝の頭の中で煩いぐらいに警告音を鳴らす。  だけど、逃げられない。  自分が逃げればその矛は葉瑠に向いてしまう。それだけは嫌だと下唇を噛み、頭を左右に振り警告音を消す。 「着いたよ」  永峯柳斗とローマ字の筆記体で書かれたプレートが光の反射で自分を写し出し、本当に良いのか?と問いかける。  嫌も何も、兄ちゃんが泣く姿を見たくないと、開けられた部屋へ、自らの意思で中に足を踏み入れた。 パタンッ 戸が閉まるなり、帝の唇を奪う柳斗。 「んっ……ちょっ……」 「シーっ、静かにして」 抵抗する帝の頬に手を重ねて、逃げ道をなくし、無理矢理後ろに向かされる体制では直ぐに酸素不足となる。そのギリギリ意識が飛ばないかを見極め、少しだけ隙間をあけては呼吸をさせ舌を侵入させる。 舐めあげて、吸い上げて。 徐々に熱くなる身体。 愛が溢れ、高まる想い。 この子を壊したい。 自分から求めてくるように。 じっくり時間をかけて……。 柳斗と帝の絡んでいる姿を横目に、一人靴を脱いでベッドに向かい、腰を掛け、手招きをして2人を呼ぶ。 「どうせならこっちに来てやろよ」  目を閉じて涙を流した帝。  脳裏に浮かぶのは葉瑠の笑顔。 「せっかちさんは嫌われるよ?」 「いや、入るなりキスした柳斗さんには言われたくないね、うん」  柳斗に抱っこされ、寝室にたどり着くなり康介の横へ投げ飛ばされた帝。いくらコイルが衝撃を吸収するとは言え、痛くない訳でもなく、小さな蠢き声をあげると、康介が帝に覆い被さる。    ごめんな、  俺達は帝さんが好きなんだ。  お願いだから拒まないで。  俺達意外に誰にでも甘えないで。  お願い……本当に……ごめん。
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