ゼンダークラッシャ

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柱の古時計が十一時を知らせたのは、二十八人目の答案に欠点を出したときだった。 僕が試験前夜、決死の覚悟で作成した解答用紙達は、我が校の伝統ある詰め襟を着た、図体ばかりの大きな怪物共の手によって様々な解答が書き込まれている。その中に面白い趣向の物が混じっていればまだ救われるが、その様なものはハナから求めていない。思えばもう十人目ぐらいから丸をつけた記憶が無い。 何故、奴等はこうも大胆かつ独創的な解答を叩き出すのやら。少しでも点数を稼がせてやろうと紛れ込ませた小学生でも解けるであろう問題も、これでは意味が無い。 奴等は親の心を理解しないものだと世間では言われているが、何も親の心だけに限った話ではないだろう。 そんな事を考えながら、僕は最後の一人に欠点をつけた。結果は四十人中三十七人が欠点、運良く難を逃れた三人も恐らくまぐれだろう。さて補修の課題は何にしてやろうか。 それにしても採点だけに随時と時間を取られた。本来ならば適当な厚さの書を片手に床に潜り込んで好きなだけぬくぬくとして居られたろうに。 そう思いながら僕は、全ての元凶である奴を睨みつけた。
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