第一章 星になる街

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 かく言うぼくも、本来だったらそうやって、喪に服しつつものんびりとした週末を過ごすはずだった。  なにもせっかくの休日に、朝早く起きて、汗水かいて葬儀会場へ急ぐ必要なんてなかったのだ。 「ドちくしょうめ」  親父譲りの悪態が口を突く。  ペダルを漕ぐのを少し休めて、首の筋肉をもみほぐした。  視界一杯に飛び込んでくる、どこまでも青い夏空。  そのあまりの眩しさに、寝不足の眼球がぎしぎしと軋む。 『死者を悼む気持ちを忘れては神罰が下る。ゆえに明日の葬儀は全員出席すること。きちんと出欠も取る。遅刻、欠席は言語道断!』  昨日の放課後、クラス担任にそう言われた時は目の前が暗くなるような気分だった。  ちょうど完成間近のジグソーパズルがあって、ぼくは徹夜でそいつを完成させるつもりでいたのだ。  もうずっと前から挑戦しつづけている五千ピースの超大作で、あとは真ん中付近の五百ピースを残すのみとなっていた。
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