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午後十一時、四十五分――
血が、足りなかった。
意識が朦朧として、目の前になにがあるのかも判別が出来ない。
そこはゆるく上り坂になった、うす暗いトンネル――
――地下を貫く、死者の進む道。
ぼくは壁に手をつきながら、一心不乱に足を進める。
一歩進むごとに、視界の暗さは増す。
かみ千切ったシャツの袖で止血してあるものの、ふりむけば点々と血の痕が続いている。
……撃たれた肩と太ももの傷は、深い。
蛍光灯を反射して、鉄のレールが鈍色に光る。
「くそっ……」
毒づく声すら、弱々しい――
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