第一章 星になる街

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   一  フロウボードのペダルを漕いだ。  さわやかな朝の空気が、濡れた髪の毛をすり抜けていく。  ぼくは寝坊して、おまけに寝癖がびんびんだった。  どうにか押さえつけようと、頭から水を被ったのがいけない。  暦上は夏だとはいえ、朝の空気はまだ冷たい。  ぼくの脳みそはぎんぎんに、氷みたいに冷やされていく。 「――っしゅん!」  くしゃみをしたらカップルに、指を指されて笑われた。 「ちくしょう」  腹立ちまぎれに、ボードのギアをトップに入れる。  前方の吸気口でウィングの羽ばたきが大きくなり、新鮮な風が大量に取り込まれた。  どういう仕組みか知らないが、それがボード底部に吹きつけられて運動エネルギーに変わるらしい。  学校で詳しく習った気がしたが、物理は得意じゃないのですぐに忘れた。
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