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カタカタカタカタカタカタ………
一人きりのオフィスにキーボードを叩く音が響く。
今日は金曜日、時刻は現在21時。
一週間がっつり働いて、ようやく訪れた週末の夜なのに。
飲み会だ、デートだって浮足だって帰るみんなを尻目に、私は一人で部下がやらかした失敗の尻拭い中。
もうヤダほんと。……ため息が出る。
ーーーーーー
『紺野さん、ほんっとーにすみませんっっ!』
今から4時間前。あと10分で定時って時に、後輩の矢野 賢太(ヤノケンタ)が週明けの会議で必要な資料を一瞬でダメにした。
横から必死になって謝まってくるヤノケンに、フリーズしたPCを前に呆然とする私。
『……もういい、あとは私がやるから。ヤノケン約束あるんでしょ? さっさと行きなよ』
『で、でもぉ~……』
『男が語尾を伸ばすんじゃない! さっさと行けっ!!』
『すっ、すみませんっ』
私に怒鳴られて、ヤノケンは慌ててオフィスを飛び出して行った。
そして、オフィス中の痛い視線が私にぶすりぶすりと突き刺さる……。
……みんなしてそんな顔しなくても、わかってるわよ。
私は怖い。
どうせ私は……可愛くない。
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