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さて、置きゲル。
平成に入ると、置きゲルはもはやオートキャンプ場のような形態となり、ゲルの建て方も分からなくなった都市部の若者や、観光客に親しまれていた。
しかし、ここで大事件が起こる。
日本の相撲会で大横綱となり、モンゴルでも英雄となっていたファン太郎(日本名あきのり)が、病気療養中に、ヘディングシュート騒ぎを起こしてしまう。
週刊紙の見出しには、「横綱はヘディングも日本代表級!」といった見出しが踊り、ファン太郎に憧れるモンゴルの若者たちは、競ってヘディングの練習をはじめた。
この頃である。金のない若者たちが、「ゴールとか持ってないし、あれをゴールにすりゃいいじゃねぇか」と、置きゲルをゴールに見立てて練習しはじめたのは。
ゲルは羊の皮でできており、切り取ってボールにしてしまう輩まで現れた。フェルトを剥がされた骨組みは、ゴールネットのようにすら見えたのである。
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