恋の始まり

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 葵は学校に着くなり音楽室に向かう。歌っているときが一番安心できるから。 一番好きなのはボーカロイド。歌い手としても活躍していた(と言ってもマイナーだけれど) 今日もボカロ曲を歌いまくる。有名な曲から超マイナー曲まで… 予鈴が音楽室に鳴り響く。葵はこの音を聞くたび憂鬱になる。 「教室…行かなくちゃなぁ」葵はおどおどと教室に入る。 この空気が苦手でならなかった。SHRが終わって、一限目は昨日の期末テストの解答。 次々とテストが返される。葵は95点。社会は元々苦手ではない方だった。 しかし95点という点数をもってしても喜べない。それには理由があった。 葵の両親は完璧主義者で満点でないと暴力をふるうような親だった。 あっという間に放課後になり、今日は生徒会があった。 「はい、それではこれから生徒会を始めます」葵の役職は副会長。 この学校は成績で生徒会のメンバーが決められる。役職の選択は自由。 葵は自ら望んで副会長になった。この学校では誰もが会長になることを憧れる。 なのに葵は会長の座を自ら他人に譲った。 会議を進めている途中だった。委員会の担当の夏目先生に腕をひかれ、相談室に連れ込まれた。  相談室の空気は心なしかひんやりしている。戸惑いながらも私は夏目先生に 「一体、何のご用で御座いましょうか?」先生の瞳に映る私の顔は怯えていた。 先生は遠慮がちではあるがストレートに言った「その痣、どうしたの?」 咄嗟に私は服の袖を出来るだけと引っ張っていた。 「こ、転んだ、だけ…です」挙動不審ながらも言う。 「そんなところにふつうは痣なんて出来ないだろう?」 図星を付かれ、フリーズする。「一体、何があったんだ?」先生は私に優しく問いかける。 誰にも言えなかったこと、この人には話しても大ジョブなのかな…? 恐る恐る口を開く「悪いのは、全部、私です…」 先生の目が二つの点になる。「何を言ってるんだ?」 「私が悪い子だから…親は仕付けようとして…私を」そこまで言って涙がこぼれた。 たかが26歳の男性教師を前に、何故泣かなければならないのだろう… 他人前で泣いたのは初めてだった。「自分でも、本当は解っているんじゃないのか?」 「でも、両親は私ができの悪い子だって…」そこまで言うと何か暖かい物に包まれた。 「もう、我慢しなくていいから」先生の涙が私の頬を伝う。 そして私の鼓動は徐々に高鳴っていった…。
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