1番 青空を仰げば

2/30
140人が本棚に入れています
本棚に追加
/234ページ
 長倉海人は何をするでもなく、青空を仰いでいた。何かいい事はないかなぁと。あるわきゃない。  三月の初め。それは終わりと始まりの狭間の時。合格通知という名の終戦によって長きにわたる受験戦争が終わり、卒業式と言う名の訣別によって、それまでの学校生活に別れを告げる。そして新たな生活が始まろうとしている。だが、今はまだその時ではない。  とでも言っておけば、ロマンティックに聞こえるのだろうが、結局の所、長倉海人は暇なだけなのであった。高校合格の通知が来たのは二月の半ば。卒業式も一昨日に終わり、後は何をするでもない。高校の生活に備えて今から勉強しておかなくては! なんて、高尚な考えなんて哄笑と共に捨て去った(高校合格後、一度だけ勉強しようかなとかは思ったのだが、三日どころか三時間ともたなかったのである)  じゃあ、運動なり趣味なりやればいいじゃないか。そうも行かないのである。何しろ、中学時代に入っていた部活といえば写真部。それも潰れかけの、である。入って初めてやった先輩との共同活動「部活を存続させてください」と先生に頼み込んだのは、印象的だった。勿論悪い意味で。
/234ページ

最初のコメントを投稿しよう!