市場

11/15
54人が本棚に入れています
本棚に追加
/397ページ
その時、人混みの向こうから店主が走って来た。 「おお!兄ちゃんありがとな!」 言いつつ店主が品物を拾っていく。 「ほら、これ、ちょっとだけど持ってけ」 「あ、どうも」 リンゴを一つ貰う。 俺は両手が塞がってるので、受け取ったのは灯だ。 そんなやりとりをしていると、今度は人混みの方から武装した二人の警備員が走って来た。 年配の男と若い男の二人組だ。 どこか、白鳥と笹島さんを彷彿とさせる。 若い方の警備員が叫ぶ。 「大丈夫ですかー!?」 しかし、倒された盗人を見て、年配の方の警備員は息を呑んだ。 「っ!?き、君は一体……」 「タダのトオリスガリです」 正体不明のヒーローの言うような言葉を棒読みで言いつつ、盗人を警備員に引き渡す。 しかし、そこで俺の顔をまじまじと見つめていたもう一人が声を上げた。 「あ…ああっ!俺、こいつ知ってますよ!」 「ん?誰だ?」 「あれですよ!半年前、ここ一体の暴力組織をたった五人で壊滅させて、追い出した……!」 なんだか面倒なことになりそうな予感がする。 周囲の人混みがざわつく。 俺が顔をひきつらせていると、若い方の警備員が顔を輝かせた。 「確か……空間 宇宙(あきま そら)!『自警団特殊部隊』の空間宇宙ですよ!」 続いて年配の方の警備員が目を見開く。 「何っ!?この子供が!?」 「い、いや……違……」 名前を看破され、思わず後ずさる。 しかし、老警備員にがちりと腕を掴まれた。 「ちょっと来てもらおうか」 なんだ。この気迫は。 「え……あの……あはは……」 離してくれそうもない状況に、俺は苦笑いするしかなかった。 ___________
/397ページ

最初のコメントを投稿しよう!