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一時間後。
警備隊の駐在所からやっとのことで解放された俺に待っていたのは灯の厳しいお言葉だった。
「遅い!」
しかし、一時間拘束されていた俺に言い返す余力は無い。
「んなこと言っても……」
俺の状態を的確に表すならば、「ぐったり」だ。
時間は既に昼過ぎ。太陽が高く登っている。
半日過ごしただけここまで消耗するとは、夕暮れまで持つか不安な所だ。
「一体、なんで強盗を捕まえた宇宙くんが連れてかれなきゃいけないの!?というか、今まで何してたの!?」
灯が歩き出しつつ、憤る。
「なんつーか……接待的な…?」
「はぁあ?」
今更だが、俺の正式?な肩書きは『自警団特殊部隊 第4番隊員』という。
なんとも長ったらしい肩書きだが、一応は俺の立場を簡潔に纏めているので、仕方ない。
「自警団特殊部隊」というのは知っての通り、自分で言うのもなんだが自警団の中でも選りすぐりの強さを持つ五人の事だ。
そして「第4番隊員」というのは、その五人の中で四番目に強い事を示す。
詰まる所、肩書きが表すのは俺が「街で四番目に強い人間」ということだ。
三年前、両足と左腕の骨折が完治し、厳しいリハビリを終えた後、俺はとにかく体を鍛えまくった。
ただひたすら大切な物を守る為に、訓練を積んだ。
"構築"があった事も大きい。
自分の体の状態を正確に把握出来る俺は、オーバーワークというものを知らない。
だから体を壊す事もなく、最も効率の良い訓練を行う事が出来た。
そして一年が過ぎた頃、統轄された『グループ』の猛者をまとめあげ、街を護るための組織が創設された。
それが自警団だ。
もちろん、俺も指名され、その後もひたすら訓練を積んだ。
そしたら何時の間にか、こんな立場になっていた。
さて、肝心の灯の質問の答えなのだが。
半年前、俺含む『自警団特殊部隊』の五人は特殊部隊最後となる任務に就いた。
任務内容は「市場を害する暴力組織の壊滅」。
幸い、突入時に第1隊員である笹島さんが足を滑らせて機関銃の弾幕に晒されたこと以外は何事もなく終わったのだが(本人は奇跡的に無傷)、問題はこの後だ。
俺達は全員、市場の人達が開いた祝勝会を辞退した。
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