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その裏には、「任務を終えて疲れているのにお前らの相手なんかしてられるか」という俺達全員の心情があったのだが、市場の方々は何やら勘違いをしたらしい。
どうやら「街の特殊部隊は謙虚なカッコイイ人達」という印象を抱かれたようだ。
そんなわけで、市場で正体がバレると俺達五人はまるでアイドルのような扱いを受けることになるようになってしまった。
別れ際に、特殊部隊唯一の女であり鋼の愛想良さを持つ、3番隊員が市場の人達に対して最後まで笑顔を絶やさなかったことも原因の一つだろう。
5番と二人で文句を言おうとしたのだが、相手は俺達より強い。
一睨みで黙らされてしまった。
そんな感じに説明するが、灯は納得しない。
「まだ中で何してたか言ってないよ!」
「あー、……いやな?」
「何?……何か言いたくないような事でもしてたの?」
随分待たされたので、本当に機嫌が悪い。
言いにくそうに答えるだけでこの始末だ。
「何か言ったらどうなの!」
これ以上黙ってると更に機嫌が悪くなりそうだったので観念して答える。
「……なんか……食い物と飲み物出されてよく分かんねぇお世辞聞かされて、最後にサイン書かされた……」
中身の無いお世辞一時間だ。
辛すぎる。
「は…………?」
そう言って、不意に灯が黙り混んだ。
嵐の前の静けさ、という物がある。
それだ。
そして直後、それは爆発する。
「はぁああ!?何それ!?訳分かんない!」
俺もそう思う。
灯はすっかり膨れてしまった。
「宇宙くんも宇宙くんだよ!さっさと抜け出して来ればいいのに!」
「い、いや、悪かったよ。本当ゴメン」
「むぅ……」
すると、不意に俺の前を歩く灯がスピードを緩めた。
避けようとしたら、体重まで後ろに乗せて倒れそうになったので慌てて受けとける。
「お、おい。何だよ?」
「……なーんでこういうことになるかなぁ……?」
「へ?」
俺に寄りかかるようにして歩く灯が上目遣いに俺を見る。
「今日は二人で楽しく過ごせると思ってたのに」
「…………」
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