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「……知ってんなら、普通電話かけて来ねぇよな?」
『それは謝るよ』
そう言いはするが、悪びれた様子は全く無い。
『ところで明日、病院に来れる?』
「それはまた唐突だな。何か用か?」
『うん。……ちょっとね』
星は言葉を濁らせる。
星がこう言う時はロクな目に遭わないことは経験が語っている。
しかし、俺は内心溜め息を吐きつつ答えた。
「分かった。何時に行けば良い?」
何だかんだ言って、星は親友だ。
親友の頼みとあっては聞かない訳にはいかない。
『配達が終わってからで良いよ。1時くらいに来て貰えるかな?』
「ああ。分かった」
『ありがとう。じゃあ明日』
ブツリ、と電話が切れる。
「何の話?」
灯が首を傾げる。
「分かんねぇな。でも、配達依頼だったら普通にメールですりゃあ良いし……」
たまには一緒にメシでも食おう、なんて話だったら言葉を濁す訳がない。
ということは、
──……危険がある依頼か。
つまり、自警団としての俺に用があるわけだ。
「…………」
「どうしたの?」
黙りこんだ俺に、灯が不安そうな顔をする。
──要らねぇ心配はかけさせなくても良いか。
そう結論を出し、答える。
「いや?何でもねぇよ。明日、病院に来い、って話だ。メシでも奢ってくれんじゃねぇか?」
ハハハ、と笑いも入れてみる。
灯はしばらく訝しげな視線を送って来ていたが、若干不安そうな色を残しつつ、
「そう?」
と、言った。
「おう。さぁ、行こうぜ。しっかり楽しまねぇとな!」
「う、うん……」
そう言って、俺達は歩き出す。
この時、俺は想像もしていなかった。
この電話が、俺達の知らなかった新たな驚異と引き合わされる為の扉を開ける鍵だったなんて。
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