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次の日。
配達を終えた俺は、星に呼ばれた通りに病院にやって来た。
エントランスから入ってロビーを通りすぎる。
患者らしき人は5、6人。
閑散としたロビーだが、この街は人口数百人なので、こんなものだろう。
県立病院の廊下を歩き、星の部屋に向かう。
一階の奥の方、そこに星の根城はある。
俺の親友である星は、この病院に勤める医者だ。
基本的に担当は外科らしいが、よく産婦人科や内科、その他諸々の方も手伝わされると聞く。
つまり、星はほぼ全ての医療を網羅している。
流石、俺が体を鍛えまくっていた三年間ずっと医学書ばかり読んでいただけの事はある。
もちろん医大を出ていない星は無免許だが、ヤツの同僚である波 桐子(なみ とうこ)医師によると、「腕は確か」との事。
ちなみに星の始めての手術は三年前の骨折の手術だが、何を隠そう患者は俺だ。
後で聞いて、背筋に寒気が走ったことは言うまでもない。
診察室とは別にある、この病院の医者の部屋が並んだ廊下で一番奥にある「黒柴 星」というネームプレートが掛かっている部屋をノック。
すると、
「へ~い」
という返事が聞こえた。
「………ん?」
星の声では無い。
かといって、聞き覚えの無い声でもない。
とりあえず、返事はしたので中に入る。
しかし、部屋に星は居なかった。
代わりに窓際に別の人物が座っている。
その人物は、口に咥えたタバコから紫煙をくゆらせながら、俺に向かって手を上げた。
「よぉ、宇宙」
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