三年

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一戸建ての家の玄関前でコンコン、と二度ノックをし、次いで白い息と共に少々大きめの声で言う。 俺の手には、封筒が掴まれている。 「すみませーん。宅配便でーす」 はーい、と中から声がする。 10秒ほどして扉が開き、現れたのは30代半ば程の女性だ。 メモを見ながら確認。 「えー…と。立花 薫さんで宜しいでしょうか?」 「あ、はい。そうですけど……」 「お届け物です。どうぞ」 手に持っていた手紙を女性に渡す。 女性は書いてある送り主を見て、軽く微笑んだ。 「まぁ、隣町の友達からだわ。ありがとう」 「いえ。ご利用ありがとうございます」 軽く会釈をし、門の近くに停めてある電気スクーターへ踵を返す。 不意に強い風が吹き、冷たい冷気が肌を刺した。 ほとんど反射でマフラーを巻き直す。 かなり歪な形のそれはクリスマスプレゼントで貰った手作りの品だ。 「寒っ……」 今の俺の格好は、Tシャツの上にトレーナーを一枚着込み、更にその上から赤いダウンベスト。下はジーンズだ。 しかし、1月の空の下を歩くには少々無謀な格好だったらしい。 俺は仕事のために一時的に借りているだけの電気スクーターに跨がり、ジーンズのポケットをまさぐる。 ──今日の配達はもう無いよな。 配達メモを取り出して確かめると、先程の家が最後という事が分かった。 「よし……じゃあ、帰るとしますか」 そう呟き、俺はスクーターを発進させた。 ______
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