序章 そんなことは突然起きるわけで…

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時は平成二十年、所は日本の古都・京都。 俺は、高校最後の年、修学旅行でその地を訪れていた。 旅の日程は、京都・奈良と古都を巡る古き良き時代が感じられる、ひと昔前の定番コース。 友達はみんな嫌がってたけど、俺としては大好きな新撰組所縁の地を回れておおはしゃぎ。 一人うきうきな毎日だった。 修学旅行最終日の今日は、清水寺の見学に来ていたわけなんだけど。 「…おい、晶良…めっちゃ目立ってるぞ?」 「本当だよ、一緒に居る俺らの身になれお前!」 「え?そんな目立つか??」 ため息混じり、呆れ半分からかい半分な声。 それはこの俺、上杉晶良が羽織っているものにむけられていた。 浅葱地に袖口を山形に白く染め抜いた羽織。 かの有名な新撰組の隊服、俺の手作り作品。 本当は小袖袴も着用して、太刀だって脇差しだって差したかったけど。 先生たちに、こっぴどく怒られ反対され光り物たちは没収されちまった。 だから、先生たちに掛け合い妥協に妥協して、今の学ランに羽織姿で手を打ったわけで…。 「お前なー、どこ探したってそんな格好してんのお前だけだと思うぞ?」 「つーか地声でけぇのに、わぁわぁはしゃぎすぎだし…」 「えー?やっぱ本場に来たら市内巡察や御用改めとかやりたいし?」 「「…でたよ、新撰組オタク…」」 うきうきと満面の笑顔で答えれば、ひきつった表情の二人。 何時もの事なのでスルーして、俺はこの絶景を堪能しようと欄干に脚をかけて昇った。 「ひゃー!絶景かな絶景かなー!」 「ばっ、あぶねーよ!降りろ、晶良!!」 「大丈夫、大丈夫、これくらい…」 「いいから降りとけって、巡回の先生に見つかったら…!」 「あ、それもそうか…わりぃ、わりぃ」 と、友の言葉にそこから降りようとした瞬間。 トンッ…、と背中を何かに押される感触プラス。 髪を撫であげてく、初春の少し冷たい風に煽られ。 俺は、投げ出される形で宙を舞うことなったわけで。 …ここまでは、良しとしよう。 けど、けどだよ? 死んだと思って目を開けたら、真っ暗闇のカビくさい空気。 全身に走る鈍い痛みの数々に、どうやら生きてるらしいとわかったけど。 なんで俺、後ろ手に縛られてるんだ…?
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