醜男

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 私は妻に応接間に戻っているように言った。これは、私なりの気遣いだ。秘密を晒す為とはいえ、妻も嫌悪しているアレを見せるのは忍びなかった。妻が立ち去ったのを確認してから離れの戸にかけられた頑丈な鍵を外した。警官といえば、この豪邸にどんな秘密が隠されているのか、緊張しているようだ。実に暢気である。これから、そんな暢気な気分を忘れてしまうというのに。 「ご主人。アレはなんですか?」  離れに入るなり警官は、嫌そうな顔をして離れの奥に座っている、アレを指差した。  離れに居たのは、一人の醜男であった。ただの醜男ではない。人々が嫌悪に感じる要素を全て詰め込んだような、気味の悪い醜男が離れに居座っていた。 「アレが、我が家で問題になっているモノです」 「失礼ですが、アレはお二人のお子様ですか?」 「冗談じゃない!」  警官の言葉を私は、強く否定した。 「私の子供は、あなた方も知っているでしょう?大学教授に、政治家、一流企業の次期社長!アレがどうして、私達の子供になるのですか!」 「し、失礼しました。では、アレは何ですか?」 「詳しく聞かない約束ですよ」 「そうでしたね・・・。それで、私達、警察にどうしろと?」 「アレを、この家から追い出してもらいたいのです」  私は口元にハンカチを当てて、出来る限り醜男の口臭を吸わないように気を遣いながら、指差した。 「アレを追い出せと?」 「そうです。奴は我が家にとってストーカーのような存在です。しつこくて、どうしようもなくて、こうして、離れに閉じ込めておいたのです」 「ストーカーですか」 「他の都市の条例ではストーカー行為の禁止などがあるでしょう。アレはもうそれが、執行される前から我が家につきまとっているのです。本来ならば、この家でパーティーを開いて、多くの著名人をお招きしたい。しかし、アレの存在がバレると思うと、恐ろしくて、とてもじゃないができない。だから、いつも、どこかのビルを借りてパーティーを開くしかないのです」 「なるほど、それはお悩みでしょう」
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