第一章 箱庭

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思わず顔が綻んでしまう。前へと歩みを進める足もいつの間にか軽快なステップを踏んでいる。 今はわからないことを深く考えても仕方がない。とにかく二人が生きている可能性があることが分かっただけでも心がすごく軽くなった。元々計画的に考えて行動するタイプでは無いし、何かあったらその時はその時だ。 歩くだけなのも暇だし、余裕のできた心で久しぶりのもーちゃんとの癒しの一時を楽しむことに決める。 もーちゃんといえば、あれは夢だったのだろうか。暗闇に包まれた世界でのもーちゃんとの会話。 ――わたし……さがして…… その意味するところも、良く分からない。探すとなると、蓮と詠美のことぐらいしか思い付かないけど。――やはり俺の心がみせた幻覚だったのだろうか。 そんなことを頭の中で考え始めた、ちょうどその時だった。 背筋が凍るような。そんな戦慄に思わず妄想が打ち消される。 反射的に体勢を低くし、横目で木々の狭間を窺うと――そこにソレはいた。
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