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腕や身体の震えも痛みのせいか恐怖のせいか分からなくなる。仰向けになり尻を地に着けた状態のまま、怪物から距離を置こうと後ずさる。
「く、来るな!」
後退る先、背中に幹がぶつかる感触。
追い詰められた!?
怪物は触手の動きを一瞬止めた後、それらを急速にこちらへと伸ばす――。
俺の瞳に映るそれはスローモーションのような速度。しかし目で追えるというだけで、身体を逃がすことも攻撃を防ぐことも出来ない。
俺に出来たのは……ソレとの間に壁を作るかのようにただ右手をあげることだけだった。
――その瞬間ブレスレットが神々しい光を放った。
俺とソレを飲み込むかのように空間を包む光。
目が焼かれ俺は思わず目を瞑る。突然のことで思考は追い付かない。
しかし依然として危機的状態は続いていることだけは理解できる。光で多少は足留め出来たかもしれないが、おそらくそれも一時的な時間稼ぎに過ぎない。その時間を活かさない手はない!
俺は全力で四肢に逃げるよう指令を送る。――しかし、その思いとは裏腹に身体は固まってしまったかのように言うことを聞かない。
そればかりか、光が脳内を蹂躙していくかのように段々と意識が遠退いていく。身体が限界を迎えたのか……。不思議と痛みはどんどんと薄れていく。
せっかく……また会えると思ったんだけどな……。
抵抗出来たのはほんの一瞬だけ、俺は眠るかのように意識を手放す他無かった。
…………蓮…………詠美…………ゴメン。
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