第一章 箱庭

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――◇――◇――◇―― ――………お……………年…………… なんだ……。 ――……おい…………起きろ………… ん……声……? 「……だ、……ダレ……?」 声が上手く出せない。身体もだるく、意識も朦朧とする。 「気づいたか。少年、大丈夫か?」 微かに目蓋を持ち上げると、黄金色の無精髭を生やした男の顔がぼやけて映る。 「起きれるか?」 意識だけが覚醒していく。身体を起こそうと肘を踏ん張るが思ったように力が入らない。 「ゆっくりでいい」 そう言って男は諭すように俺の肩に手を置く。それに対し俺は素直に頷き少しずつ身体を起こしていく。 男も背中を手で支えてくれ、その力を借り何とか上半身を起こすことが出来た。 「怪我はないか?」 身体は重いが痛みを感じる箇所は無く、大丈夫と言う代わりに首を縦に振る。 何気なく自分の身体を見ると腕回りの服が引きずられたかのように破け、右の手首にはブレスレットが鈍い光を放っている。 その瞬間、先ほどの光景がフラッシュバックするかのように思い出される。 「あ、アイ……ツは……!」 思わず辺りを見回す。――が、先ほどの黒い何かはおらず、横に男が屈んでいるだけである。 場所も山の中では無く、森が途切れちょうど平原へと繋がる境界線にいるかのような、そんな景色が広がっていた。
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