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「大丈夫だ。ここに危険はない」
そう言って微笑みを浮かべる。
この人が助けてくれたのか?
・・
「と言っても、今はだが。動けるならすぐにでも移動したい。近くに街がある」
そう言って立ち上がると、手を差し出す。身体に力は入らないが、その手を借りてなんとか立ち上がることだけはできた。
その際に立ち眩みがしてふらつくが、男がしっかりと支えてくれる。
「俺は……アンタが……助けて?」
男は静かに首を振る。
「見つけた時には君が1人でここに倒れていた。私は街の周りの安全を確認していただけだ」
男が視線を向ける先、遠くに灰色の壁がそびえ立っているのが見えた。
「とにかく話は後だ。街まで行けば安全な場所があるからそこに着いてから聞こう」
そう言って俺に肩を貸し歩き始める。俺も素直にそれに従い男と共に歩き始めた。
俺は貧血気味の朦朧とする頭の中で考えていた。
なぜこんなことになってしまったのだろう、と。
死と隣り合わせの残酷な世界。
ここに来るまでのことをゆっくりと思い出していった。
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