第ニ章 回想

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――授業の終わりを伝える無機質な電子音が教室の中に響き渡る。 そのチャイムと同時に急激に思考が現実へと引き戻された。時計の針は数字の3をとうに回った場所でチクタクと時を刻んでいる。 抜群の催眠効果という点で他の追随を許さない世界史の授業が終わったみたいだ。授業の始めに能力の起源の話をしてた所までは覚えているんだけど――。 高校2年の最初の平常授業。心機一転成績の巻き返しを図ろうとする無謀な挑戦者を除けば、普段と変わらない日常に過ぎない。 うちの場合クラスは1年の頃と変わらない編成だしな。 俺は授業中の暇な時間を脳内の『もーちゃん』と話すことで潰していた。妄想人格だからもーちゃん。 彼女は、うちの親父の“人に説明すれば3倍理解できる”というやや間違った認識に基づく英才教育によって、幼い頃俺の脳内に生誕した。 ちなみに、身長158cm、体重41kg、3サイズは上から82/62/85、とってもプリチーな女の子で―― ――妄想の海に浸る俺の耳にふと微かな風切り音が届く。 ッ! ふいに顔面に向けて飛んできた紙飛行機。俺の妄想を打ち破るには十分過ぎるサプライズ。 しかし残念なことにその速度は俺にとっては脅威になりえない。 首を傾けギリギリのところを最小限の動きでかわす。かわす際に横目で飛行機を見て、イラッとした。 「バカとはなんだバカとは」 「さすがハレハル!動体視力だけはスゴいね♪」
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