第一章 箱庭

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――◇――◇――◇―― 弾きだされるような一瞬の感覚。身体を浮遊感が支配する。 次第に頭が下方向へと傾くと、自然の法則に従い身体に重力が纏う。 ――そうだな。うん、確かに。 暗闇からの解放、それを俺は確かに願っていた。 そうなんだけど。 普通目覚めたらベッドの上でさ。母親がご飯よー、って起こしてくれるいつも通りの日常を俺は期待してた訳だ。夢なら覚めてくれって感じでさ。 ――続いちゃってんじゃんかよ、夢。 迫り来る水面。 そう、俺は今急速に落下している。 死の直面の走馬灯。それを俺は、いい加減な願いの叶え方をしてくれた神様への抗議のために費やしてしまった。 泳ぎは苦手ではない。今は俺の身体の耐久力を信じよう。 ――身体に感じる水の衝撃。勢い良く水面に叩きつけられ、ブクブクと深く水中に沈む。 しかし、どういうわけか。身体で感じた衝撃は思いの外少ない。全人類の半分(♂)の急所と言うべき一部へのダメージを除いて。 俺は何とかその痛みに耐え、オリジナル犬掻きで水面を目指し、岸まで這い上がる。 空気がこれほどに美味しいものだったなんて! 呼吸を整え、深呼吸をし、存分に酸素を味わう。
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