第一章 箱庭

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とりあえず服の水を絞ろうと、服を脱ごうとした時――見慣れないブレスレットが腕に装着されていることに気づく。 銀色の何ら装飾の無いブレスレット。 それは不思議と神秘的な輝きを放っているように見えた。そして気づいた後もその重さを全く感じない程に軽い。 普通ならありえないことだと思う。でも、起きたら落下中でしたなんて状態に比べれば全然マシだ。 外すべきか一瞬悩むが、割りと似合っている気がしたのでそのままにすることにした。 モテ度指数上がるよね?これ? 気を取り直し服を脱ぎ水を絞り始める。それと同時に辺りの様子を改めて見る。 生い茂る樹木。滝が跳ね上げる水飛沫。広大なる自然。 うーん、空気が美味しい訳だ。 って言うてる場合か!どこだここは!見慣れないとか以前に何で山奥だよ!サバイバルでもしろってか? ――とりあえず落ち着いて考えよう、俺。 近くの平たい岩の上に絞った服を載せた後、胡座をかき思考モードに入る。 ――当然いくら考えたって分かるはずも無かった。しばらくその体勢のまま思考を続けた俺だったが、途中から得意の現実逃避を始め、やがて宇宙の神秘にまで思考が及び始めた――ちょうどその時だった。 俺の目の前の空間に歪みが生じる。
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