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「たでーま」
「おかえり」
僕は久々に言われた「おかえり」の言葉に感動し、玄関に立ちっぱなしでいると篠倉がちょいちょいと手招きをしてきた。
なぜかエプロンをしている。
イケメンだった。
そしてなんだかいい匂いがする。
「立ってないで、味見をしてくれないか?」
「味見・・・だと!?」
ということは、やはり先程から漂ってくるいい匂いは篠倉が作っている料理から来るものであり、僕の胃袋を刺激してきて何この新しい攻撃とか思っていたのだけれども、まさか味見してくれとか何こいつスペックたけぇ今日から奏様とか呼んでやろう。
「奏様ァァァァァァァァァァァ」
「気持ち悪い。やっぱり自分で味見する」
「ぎゃああああああああ食べる食べます味見します!!」
靴がぐちゃぐちゃになるのもお構いなしに脱ぎ捨て、篠倉の口に運ばれようとしていたものを阻止すべく僕は走った。
そして篠倉の手首を掴み、軌道修正して僕の口の中におそらく何かの野菜だと思われるものを入れた。食べた。咀嚼した。mgmg。
「うまいよおいしいよおいしゅうございます!!」
「焼いて味付けしただけなんだが」
「それだけでもうまい!」
「それはどうも」
僕はキラキラした目(篠倉には見えてない)で奏を見つめた。篠倉の手首を握っている方の手をブンブン振る。
「・・・お前は子供か」
篠倉がふっと馬鹿にするように笑ってきたので
「これでもお前より人生の先輩だ」
と、言い返してやったが、自分で言っておいてこれほど説得力のない言葉ってないなと思った。
「じゃあ人生の先輩。手を振るの止めてくれませんか。痛いです」
「お前の敬語なんか嫌だな」
「そうじゃなくてだな・・・離せいい加減」
「え?何?僕に触られてドキドキしt」
言い終わる前に、篠倉の正義の鉄拳が脳天に落ちてくる。
「痛いいいいい」
「夕飯抜きだ」
「ぎゃああああああああごめんなさいです」
篠倉は「本当にどっちが年上だか」と呟くと「許してやるから、皿とか箸とかだして。そういうものはその棚に入っていたから」と言ってきたので、正直面倒臭かったが(クズ)料理を作ってもらった上、やらないと夕食が食べられなくなりそうだったので、僕は皿と箸を机に並べることにした。
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