銅製の太陽

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「やあ、荒っぽい」  頭から突っ込まれたルルは、咳き込みながら体勢を整えます。聖杯からまた胸びれまで出すと、威厳を取り戻して小言をつぶやきました。 「老人はいたわってくれんかね」 「だから助けただ」  見ていた工具屋の店主は小さな目を丸くしました。 「お客さん、変わった連れをお持ちだね」 「おらが持ってるんでねえ。おらが連れられてるだ」 「それより店主、店の物はご無事か」  ルルに言われて店主は中へ駆け込みます。いくつかの棚を調べてから、ほっとしたように笑いました。 「何てことはないよ。棚が倒れていたら大ごとだったけどね、箱が潰れた以外は何てことない」 「それはよかっただ」  店主は笑って続けました。 「世界一の留め金というやつを使ってるんだよ。大げさな売り文句だと思ったけど、いや、看板に偽りなしだ」 「……それはよかっただ」  ハルヤはまた暮れかかるホトケノザの丘を、歯車を転がして戻りました。  留め金工房の中は先ほどの地震のせいか、めちゃくちゃでした。機械は止まり、作りかけの製品が散乱しています。ハルヤは声をかけましたが、職人の声も姿もどこにもありません。  奥まで入って気がつきました。ハルヤが気に入ったあの大きな歯車がなくなっています。下を見ると、外れて落ちたそれが職人を押しつぶしていました。  あーあ、とハルヤは溜息混じりにつぶやきます。 「だから年寄りは大事にしねえといけねえだ」
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