一夜のお代

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ハルヤは、街の外で露店を出している一人の女に目を止めました。 腰を細く絞ったドレスを着て、カールさせた髪に大ぶりの花を一輪飾った、赤い口紅が印象的な女です。 前に置かれた台の上には、商品らしきものは何もありません。しかも人通りの少ない場所で、商売が成り立つのでしょうか。 「何売ってるんだべ」 ハルヤが興味を示すと、年長のルルは背負われた聖杯のなかで、「ふん」と鼻を鳴らしました。 「見てればわかることよ」 「じゃあ、ちょっと見てるべ」 じきに日が暮れました。 女は台の下からランプを取り出して点けました。不思議な水色の火が、煙を漂わせながら淡く辺りを照らします。 やがて一人の男がやってきました。 女は赤い唇でにっこり笑い、それから小声で話し始めました。どうやら初対面ではなさそうです。 ところどころ声は聞こえてくるものの、話の中身まではわかりません。ハルヤはそっと近づきました。 「……子どもの頃から今までだよ、最後は二人の子どもに恵まれてさ」 男はどこかうっとりした表情で語ります。一方で女は冷静です。 「順を追って話してちょうだい。子ども時代はどうだったの?」 「そうだな……まず、友人の妹なんだよ、彼女は。いつも三人で遊んでてね」 「どんな遊び?」 「多いのは怪獣とヒーローごっこかな。積み木で作った街を壊したりさ。あの子は参加しないよ、俺とあいつが遊んでるのを、お菓子を食べながら見てるのさ」 「どんな子?」 「うーん……。小さい頃はね、あんまり美人じゃなかったな。かなり太ってたんだよ。親がさ、裕福なもんで、そのかわりいつも可愛い服着てさ、金の長い髪をおさげにしてたね」
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