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「そのころから好きだったの?」
「いや。……最初はただの幼馴染だった。家が近所だから一緒に遊んでたけど、うちは貧乏だったから、親同士はあんまり仲良くなかったんじゃないかな。……で、学校もさ、別れちゃうわけ。あいつと彼女は金持ちの子が通う学校に行って……それから何年も音信不通だね」
「わかったわ、大きくなって再会してから火が付くんでしょ」
「そうそう。……彼女が十六歳のときだよ、山で偶然会ってね、あんまりきれいになってたから最初は気づかないんだ。長い金髪が見事でね、どこのお姫様かと思うくらい」
「山って?」
「家から少し行ったところの山。地元の人もそんなに行くわけじゃないんだけど、川で魚とかサワガニとか獲れるから、俺はたまに行ってたんだよ、貧乏だからね。……彼女は偶然、そこに来てたんだ」
「どうして?」
「親の決めた結婚を嫌がって。ほら、金持ちだからさ、あるでしょ、そういうの」
「十六で結婚は早いわね」
「そうだよ。でも相手が彼女を気に入ってさ、すぐに結婚ってなったんだ。彼女はまだ自由でいたいのに、会ったこともない、かなり年上の男のところに嫁ぐよう言われてさ、後先考えず飛び出しちゃったんだ」
「彼女は気が強いほう?」
「いや。……むしろ繊細なタイプかな。……ううん、か弱く見えるんだけど、実は芯の強いタイプだね」
「それでどうなったの?」
「それで……ああ、俺が釣りをして、日が暮れて帰ろうと思った矢先、風と雷がさ、すごい勢いで突然。それで、岩陰で雨宿りをしていたら、ずぶ濡れの彼女が泣きながら現れるんだよ。気の毒に思って声をかけて、しばらく話してからびっくりさ」
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