銅製の太陽

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 夜桜にランタンを灯したお祭りに出くわしました。すでに散り始めて葉っぱになった枝の間に、少し欠けた月が引っ掛かっています。  ルルが出店の一つに目を留めました。工具や金物を売っています。歯車もありました。  ハルヤがお店の人に声をかけました。お店の人は朗らかに応対します。 「いらっしゃい。うちの工具は世界一だよ」 「なら、ちょうどいいべ」  ハルヤは欲しい歯車の大きさを伝えました。  後日、ハルヤとルルは工具屋の工房を訪れました。出荷前の製品がたくさん棚に収められています。  ハルヤは大きな銅製の歯車を受け取りました。礼を言って別れようとしたとき、突然大きな地震に見舞われました。あちこちで棚が揺れ、台の上にあったものが転がり落ちます。  ルルが叫びました。 「助けてくれ、水がこぼれた」  ハルヤは慌てず、担いでいた聖杯を下ろすと、表にあった防火用の雨水にどぶんと浸しました。それから勢いで水中に飛び出したルルの尾を掴んで杯に戻しました。
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