高校2年の冬

3/8
前へ
/10ページ
次へ
「結衣、今日部活終わったら またいつもの場所な」 放課後、クラスの野球部がぞろぞろと部活に向かう中、一つの坊主頭が群れから離れ、私のところにやってくる。これがいつもの日課。 「分かった!でも、演奏会前だから少し遅くなるかも」 私は楽器と楽譜をもって部室に向かう準備をする。あれ?チューナーどこに置いたっけ?と、ぼんやりしていると、びっくりするくらい大声で おぅ!、と野球部らしい返事をして階段を駆け下り、いつの間にか見えなくなる背中。 「ちょっと!こ、光輝!って早っ!」 もう、ほんとこれだから..と思わず苦笑いをしてしまう。 うっすらと、残る背中の残像。 その背中に背負う背番号を思い出し、やるせない気持ちになる。 あぁ、どうか神様。卒部するまでにでいい。 光輝に2番の数字を背負わせてあげてください。キャッチャーをさせてあげてください。
/10ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加