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「結衣、今日部活終わったら またいつもの場所な」
放課後、クラスの野球部がぞろぞろと部活に向かう中、一つの坊主頭が群れから離れ、私のところにやってくる。これがいつもの日課。
「分かった!でも、演奏会前だから少し遅くなるかも」
私は楽器と楽譜をもって部室に向かう準備をする。あれ?チューナーどこに置いたっけ?と、ぼんやりしていると、びっくりするくらい大声で おぅ!、と野球部らしい返事をして階段を駆け下り、いつの間にか見えなくなる背中。
「ちょっと!こ、光輝!って早っ!」
もう、ほんとこれだから..と思わず苦笑いをしてしまう。
うっすらと、残る背中の残像。
その背中に背負う背番号を思い出し、やるせない気持ちになる。
あぁ、どうか神様。卒部するまでにでいい。
光輝に2番の数字を背負わせてあげてください。キャッチャーをさせてあげてください。
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