2495人が本棚に入れています
本棚に追加
/63ページ
「あ、あのー… か、彼方くん?と、とりあえず一端、落ち着こう!?」
じゃないと、彼方が怖くて俺が喋れないんだけどっ!
「とりあえずも何もない!!これが落ち着いていられ――」
興奮する彼方を止めたのは携帯の着信音だった。
ぶるぶる…っとバイブが連動して俺のポケットから音が鳴る‥
た、助かった!!!←
これ幸いと、彼方が何かを言いたげに眉尻を吊り上げるのをスルーし、電話を取る。
「はい、もしもー?」
かけてきた相手はよく知る人物で――
『もしもー?じゃねーよ!襲われたって聞いたから心配してかけてやったのに』
「こーちゃん!!!」
『だから、カオルでいいって…』
「ぇー だって、かーちゃんって呼んだら、前、もの凄く怒ったじゃん‥」
『あったり前だろうが!!!俺はお前の母親になった覚えはねぇーよ』
こーちゃんは裏で取引屋というのをやっている俺と同じ学生。腐男子とかなんとか言ってる奴で、本名は水咲 香(ハヤサキ カオル)。裏の取引屋のときはアイツはコウって名乗っている。
取引屋っていうのは、情報屋から買い取った情報を欲しい奴に売る掛け橋。仲介者。
お互い素性を知ってる仲だし、アイツはカオルでいいって言うけど… 前にカオルの"カ"で、かーちゃんって試しに呼んだら怒られたから、こーちゃんって呼んでいる。
まぁ、怒るのわかってて故意に呼んだけどな。
.
最初のコメントを投稿しよう!