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「あともう一本だけだね。」
どうして冷蔵庫の中身を見ていないのに僕の飲んでいるドリンクの本数がわかるのだろ
う。彼女は勘が鋭い。僕の動作でなぜそんなことがわかるのか、僕には未だに理解できな
い。どうしてこんなところにいるのだろう。探偵でもやれば儲かるはずなのに。そんな彼
女が僕のうちに居候している理由は単純そうでちょっと複雑。
両親共働きで帰りも遅い。僕がちょっと出かけている時にぼくの家の扉の前に倒れてい
た。人通りの少ない通りだし、そもそもアパートだから人の通りはまずない。そんな中僕
の家の前に倒れていた。何でも家を追い出されてフラフラと彷徨っていたところに行き倒
れたらしい。単純でちょっと複雑な理由。それ以上の事は教えてくれなかった。そこを僕
が助けたら居ついてしまったと言うわけだ。ついでに僕の彼女になりたいと志願したくら
いにして。何だろう、この子は。
両親には遠方の親戚と言う事で強引に納得してもらった。なんでこんな嘘をつかなけれ
ばならなかったのか、僕にはわからない。別に追い出しても良かったのだけれど、何とな
く舞い上がってしまったのかも知れない。単に舞い上がっただけなのかも知れない。とに
かく、僕に彼女が出来てついでに居候としてうちに居ついてしまった。それだけのこと。
不思議な関係であり、別に普通の関係でもある。そんな関係。ちなみに食事は母親が僕に
作ってくれるものを彼女に渡している。どうせ食べないのだからいいだろう。
彼女はたまにフラッと出かけてはいつの間にか帰ってきている。どこで何をしているの
か、僕にはわからない。と言うか衣類もままならない状態で出かけられても困る。最低限
の下着類はあっても衣類がない。普段は僕の薄いTシャツで過ごしているが、出かけると
きは最低限着替えているらしい。どこで入手したのかわからないし、どんな格好で外に出
ているのかわからない。結局彼女のはずなのに謎だらけ。逆にこっちの行動はモロバレで、
何をしようとしているのか、どんな気持ちなのかと僕に踏み込んでくる。少し腹立たしい。
僕が家を空けている時は基本何もしないように言ってある。勝手に家の中をいじられた
ら困るし、そもそも家を空ける理由は病院へ行くため。下らない話を聞くためにわざわざ
家を空けなきゃならない。正直に言って僕は彼女を信用していない。何をされるかわから
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