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ないから出来る限り何もするなと伝えてある。そうか、明日病院だ。診察より彼女の方が
心配なのだが、仕方がない。薬がないと僕は何もできなくなる。仕方ないからまた行って
こなくては。まぁ今日のところは問題ない。一日中家にいるだけなのだから。彼女が何を
しようと僕が阻止すれば問題はない。
彼女は謎に満ちすぎている。どこから来たのかすら教えてくれない。でもいきなり僕の
彼女にしてくれとか、素っ頓狂な事ばかり言ってくる。何がしたいのかわからない。彼女
の生活は基本何もせず寝ているかテレビを見ているか、それくらいしか見たことがない。
でも僕の彼女として食事を出してあげたり話しかけたりすることはある。でも真理に近づ
くと彼女は決まって口を閉ざす。そして自分から話す事はない。無感情で無表情。一体何
なのかわからない。数週間前からうちに来た彼女はもはや馴染んで、空気になりつつある。
ただ彼女の分の食事は置いておいてくれるし夜に両親がいないときは僕が適当に軽く作っ
て食べさせる。寝る時間、起きる時間は妙にキッチリしている。機械の様に正確に寝て、
正確に起きる。そういうサイクルになっているのだろう。しかしなぜそういうサイクルに
なっているのだろう。僕が気にすることではないけれど。
彼女が来てちょうど一ヶ月だった。夜中にふと目を覚ました。彼女は寝ている。彼女の
希望により僕の部屋で一緒に寝ている。両親は放任主義で別に反対はされなかった。布団
を被って丸まっている姿を想像して少し可愛いと思ってしまうのは人間の性か、それとも
僕のひいき目だろうか。元々小柄で僕の服でもダボダボで全身を覆ってしまうような感じ
だった。見た目はまだ子供、黒いショートカット。でも前髪だけは長くて、顔を覆ってし
まうくらいに長い。一度それに触れたが別に邪魔ではないとのこと。そんなことはそうで
もよくて、僕は珍しく水を飲みに居間にある台所へ足を運ぶ。
そこにあったのは惨状だった。両親は遅寝で夜中でも起きていることが多い。だから電
気がついていてもおかしいとは思わなかった。夜中と言っても午前一時頃。まだまだ夜は
長い頃合い。居間で見たのは、惨状だった。
両親二人とも頸動脈を掻き切られての失血死。そこで立っていたのは僕の部屋で眠って
いたはずの彼女だった。血で僕の服を汚して、真っ赤に染まった彼女だった。くりっとし
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