僕の彼女と私の彼氏

た大きな目に顔を覆うくらい長い前髪と裏腹にショートカットの黒髪。そして僕のお腹あ
たりしかないであろう身長。まさしく彼女だった。そんな、どうして…。
「え、あ…なに…これ、どういうこと…？」
　僕の声に気が付いたかのように真っ赤な彼女がこちらを向く。怖い。真っ赤に染まった
彼女はいつもの彼女じゃない、殺人鬼そのものだった。そしていつもの生活では想像の出
来ない速度で僕に襲い掛かる。混乱していて何も出来ない僕は、ただ立ち尽くすだけだっ
た。少なくとも疑心暗鬼の中で好意を持って接した。そんな彼女に僕は殺されるのか…。
もうダメだ、彼女との距離はもう零に近い。僕は死ぬのか。そんなことを考えていると彼
女は手に持った包丁で僕の喉を掻っ切った。もう何の感覚もなくなった。冷たい刃物の感
触が印象的だったのを覚えている。声が出せない。喉笛を掻き切られた。僕はこのまま死
ぬのか。そう考えていると彼女が涙を流していた。どうして、なぜ。僕のために泣いてく
れているのか、そう考えた自分は少し自惚れていただろうか。まぁいいや。これで楽にな
れる。この痛みからも解放される。最後に彼女の声が聞こえた気がした。

―――…ごめん。

　ターゲット、千田地区アパート在住の夫婦。潜入にはパターンαを使用。尚パターンα
には時間を要することを留意。作戦実行まであと二〇分。息子が家から出て来次第ミッシ
ョンスタート。各班用意はいいか？
　ミッション了解。配置に着きました。了解、ミッションスタートまで気を抜くなよ。今
回のミッション概要は把握しているな。確認をする。目標はアパート二〇三号室の夫婦だ。
我々に多額の借金がありそれを滞納している。これ以上見過ごすわけにはいかない。あく
までターゲットは夫婦二人だ。息子には何らかの干渉、支障がない限り手を出すなよ。い
いか、ターゲットは夫婦二人だけだ。いいな。
　了解。ミッションスタートに入ります。定時連絡は隙を見て行いますので。では私は現
場に向かいます。了解。念を押すがターゲットは二人だ。わかっているな、息子には手を
出すな。わかっています。定時連絡は隙を見て行います。ターゲットは二人、行きます。

　一週目。滞りなく遂行。家族の目に疑心暗鬼の目があり。さすがに一週程度では馴染め
ない様子。しかし想定内です。私には遠い親戚と言うオプションが付きました。多少は遂