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そして、俺は思った。
これは、ビジネスチャンスではないか、と。
俺の知る限り、孤児院の数は、まだそう多くない。
だが、彼女の様に、子供達を助けたいと思っている人は多いはず。
しかし、その気持ちを阻害するのが、金銭面や、家族等だろう。
俺は、これを真剣に検討するだけの、価値のある案件だと判断を下し、ダラムスさんと話を進める事にした。
遼「にしても、セレナが毎月仕送りしてる割には質素ですね。」
この孤児院に入った瞬間から、俺が疑問に思っていた事を、彼女に告げる。
すると、彼女の目が一瞬揺らいだ。
人間が、動揺している証拠である。
彼女の人柄、声、態度、目付き。
どれを取っても、悪い人ではないということは、分かる。
なのに、動揺した……ということは。
彼女自身が、その金を故意ではないにしろ、何らかの事情で使用できなくしてしまったという可能性がある。
この孤児院内で起こり得る事象としては……火事、魔法による破損もしくは消滅、この世界特有のトイレへの投棄……それくらいのものである。
この世界のトイレは、便器の底に魔方陣が設置されていて、中に物が入ると、電気分解のような現象が起こり、消えてしまうという仕組みなのだ。
しかし、よく考えてみてほしい。
セレナは、この俺の専属メイド。
つまり、イグナディア王国の顔役を務める人間の専属メイドなのだ。
給料も、以前とは比べ物にならないのは火を見るより明らかである。
既に、この事はダラムスさんからも、確認済みである。
つまり、かなりの大金である。
そして、そんな大金を、セレナはほぼ全てこの孤児院に仕送りしている。
その事を踏まえて、1つずつ整理していこう。
先ず、火事の可能性。
もし火事になれば、この木造の建物など、一瞬で火の海になるだろう。
なのにも関わらず、建物に目立った損傷はなく、再建した形跡も見られないことから、この可能性は低い。
次に、魔法による破損、消滅の可能性。
これは、一番可能性がありそうだが、この孤児院には、魔法が使える者は2名のみ。
テレサと、俺の助けた元奴隷だった兄ちゃんだけだ。
しかしこの二人、属性は水。
魔力量も多くないことから見て、破損、消滅させる事はほぼ不可能だと推測。
最後の、トイレだが……これは言うまでもない。
すると、1つの可能性が見えてきた。
そう……。
第三者の存在である。
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