My Sweet Home…

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そこで俺は、2つの質問を彼女に投げ掛けた。 遼「全然関係ないんですけど、昨日の晩ごはん、何食べました?」 テレサ「……え?」 もちろん、突拍子もない質問に戸惑うのは当たり前。 しかし、この戸惑い方も重要だ。 あまりにも、間が空きすぎている。 これは、別の質問が来ると思い込み、その質問にどう対処しようか考えていた証拠でもある。 そしておそらく、この後彼女は、知られてはいけない何かの、緊張感から解き放たれ、少し微笑みながら返事を返すはず。 分かりやすい単純な人間ならば、返事の際に、声のトーンがでかくなるが、そんな事はどうでもいい。 俺が見たいのは、目線の動きである。 遼「昨日の晩ごはんですよ。 何となく気になってしもて。」 テレサ「えっと、確か……。」 右下……。 彼女の目線は右下を示した。 テレサ「あ、ワイルドベアを焼いたものと、畑で取れた野菜のサラダと、スープでした。」 昨日の晩ごはんを思いだし、微笑みながら答えてくれた彼女。 俺は、確信を得るため、もう1つの質問を投げ掛ける。 遼「ワイルドベア旨いですよね。 じゃあ、一昨日の晩ごはんは?」 テレサ「一昨日?一昨日は~……。」 またしても、彼女の目線が右下を示す。 遼「あぁ、いいですよ。 いきなり、変なこと聞いてすんまへん。 俺かて、一昨日の晩ごはんなんか、思い出されへんし。」 これで確信が持てた。 彼女の目線は、真実を考える時、右下を向く癖がある。 これは人によって違うが、だいたいこの2つの質問ではっきりと示されるのだ。 真実を考える時に、右下を向く。 逆に言えば、質問の答えを考えているにも関わらず、その方向を向いていない時は、虚偽内容を考えているという確率が非常に高くなる。 嘘を見抜く方法なんて、いくらでもある。 例えば、汗の出る位置でもすぐに分かるのだ。 知られたくない事を聞かれるということは、それだけでストレスが溜まる。 そのストレスのかかる時間が長くなれば長くなるほど、手汗となって、まずは手に現れる。 そして、そのストレスから解放された時は、額に汗をかきはじめる。 彼女も、おそらくこの後、そうなるであろう。 さぁ、ゲロってもらおかな。 あの大金がどこに消えたのかを。
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