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遼「いきなり、訪ねてきた初対面の人間が、こんなこと聞くもんやないとは、思います。
せやけど、失礼を承知の上で聞かせて貰いますわ。
セレナの金は、どこに消えたんですか?」
まっすぐに、目を見て質問を投げ掛ける俺に、彼女は目線を逸らした。
テレサ「別に、何もないですよ。
この建物が質素なのは、その方が子供達への教育に良いと思ったから、そうしてるだけです。
決して、あの子のお金が消えたわけではありません。」
遼「確かに。
あんたを信用してるセレナやアイナ、そして子供達は、今の言葉を信じるでしょう。
けど、俺に通用すると思わんといて下さいね。」
俺は、更に目力を強めて、彼女にプレッシャーをかけていく。
彼女は、膝の上で拳をギュッと握りながら、この沈黙が支配する空間に耐えている。
遼「別に、あんた自身が働いて貯めた金やったら、俺も何も言いませんわ。
せやけど、セレナが働いて貯めた金でっしゃろ?
色んなもん犠牲にしながら、あの若さで働いて、そらしんどいで。
でもあいつは、自分を拾って育ててくれた孤児院に、少しでも恩返ししたい思うて今働いとるんですわ。
あんな真面目な子、どこに居るんですか?
あんたは、そんな子の貯めた金を、どうにかしてもうたんちゃいますの?
別に、俺の予測が外れてるんやったら、外れてるって言うて下さいよ。
そん時は、素直に謝りますわ。」
子供達を、我が子のように可愛がる彼女が、今のセレナの働きぶりを聞いて、なんとも思わないわけがない。
少しずつ、少しずつではあるが、事の発端を話し始めた。
テレサ「じ、実は……」
それは、まだ紅蓮隊が発足して間もない頃だった。
いつも通りの平和な孤児院に、ノックの音が響く。
テレサ「は~い。」
彼女は、扉を警戒することもなく開けた。
すると、そこに立っていたのは、いつも配達物を届けてくれる、40~50代の男性が。
「これが、今月分になります。」
テレサ「いつも、ありがとうございます。」
彼女は、配達料金を男性に払い、荷物を受け取り、差出人の名を確認する。
テレサ「いつも、本当にありがとうね。
セレナちゃん。」
扉を閉めてから、そうつぶやいた彼女は、受け取った配達物が、いつもより大きいことに違和感を覚えた。
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