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アパレルショップを出た俺達は、車に乗り込み、また目的地へと走り出す。
その道中、奢ってもらうのは流石に悪いから、服代は帰ったら払うと言うセレナとアイナに、本当の優しさとは何たるかを教えてやった俺は、ナビを確認する。
だいぶ郊外まで来ているため、王都はもう既に小さく見えていた。
遼「この道で合ってるよな?」
セレナ「え?」
アイナ「ねぇ、あんたもしかして……
孤児院に向かってる?」
遼「その通り!」
セレナ「え!?」
もう流石に、ここまで来れば、バレてもおかしくないので、隠すことはない。
ふと、全開にした窓から吹き込む風が強くなったので、少し窓を閉める。
セレナ「な、何で孤児院に!?」
遼「ん?セレナと前に約束したやん。
孤児院行くって。」
そう、あれは確か、アルとミラの入学式の日。
あいつらを送っていった後、ダラムスさん達の用意が整うまで、俺の部屋でミルクティーを飲んでいたあの時。
それを思い出したのか、セレナの笑顔が輝いた。
セレナ「ハナミヤ様、覚えててくれたんですか!?」
遼「当たり前やんけ。
ほら、俺もうすぐ王都出なあかんし。
今しかないかなぁって。」
セレナ「ありがとうございます!」
助手席で一人、テンションの上がっているセレナに対し、後部座席に座っているアイナは微妙な顔をしていた。
アイナ「連れてってくれるのはありがたいけど、私は?
ものすごく、バーター感あるんだけど。 」
遼「プフッ……バーターとか言うなや!
まぁ、もう一人ゲスト来るから安心しとけ。」
まさかの言葉に吹いてしまった俺は、タバコに火をつける。
孤児院へ向かう、明るい車内には、笑い声と音楽が絶えず響いていた。
するとそこに、新しい音が加わる。
~♪~~♪
電話の着信音である。
もう既に、七大貴族を始め、国の顔役達には、この携帯電話を支給している。
この世界には、電子機器などは存在せず、魔法でほぼ全てが成り立っているといっても過言ではない。
地球で、電話の盗聴が行われるように、この世界では魔力によって、念話が盗聴されるということも、珍しいことではない。
そこで、念話を盗聴されると困る会話の多いこのメンバーには、盗聴される心配のない携帯電話を配っているというわけだ。
相手は……
遼「ニーナか。」
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