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俺は、片手でハンドルを握りながら、携帯電話の応答ボタンを押した。
遼『やぁ、ベイビー。』
ニーナ『ハ~イ、遼ちゃん。
調子はどう?』
遼『絶不調。
慰めてくれる?』
ニーナ『あん、その気もないのにそんな事言って。
本当、意地悪な男。』
一通り、お互いに変わりがないことを確認できた所で、本題へと移る。
この携帯電話に、誰かから電話がかかってくるということは、仕事が舞い込んできたのと同義なのだ。
遼『で、ご用件は?』
俺は、助手席のダッシュボードに手を伸ばして、中にある手帳とペンを取り出す。
セレナ「ッ……///」
ニーナ『消してほしい人がいるの。』
遼『1人か?』
ニーナ『えぇ。
詳しくは、会ってから話しましょう。』
遼『明後日でえぇか?
今日と明日は、予定あるんや。』
ニーナ『じゃあ、明後日の午前10時、【海鳥】のテラス席にいるわ。』
遼『了解。』
ニーナ『じゃあね、遼ちゃん。
愛してるわ。』
遼『あぁ、俺もや。
じゃあな。』
電話を切った俺は、左手でハンドルを握りながら、手帳に予定を書き加え、またダッシュボードへと手帳を戻した。
アイナ「仕事?」
遼「おぅ。
それより、もうすぐ着くで。」
ナビには、目的地まで後1.7kmと表示されている。
セレナ「早く、みんなに会いたいです!」
アイナ「本当、久しぶりよねぇ。」
久々の帰郷に、2人とも自然と笑顔になる。
そして、1つの建物が木の隙間から、少しだけ確認できた。
森の入口付近に建てられたそれの見た目は、学校というより、教会に酷似している。
建物の扉の左横に車を停めた俺は、外に出た。
緑の葉を、元気いっぱいに生い茂らせた木々の隙間からは、暖かな木漏れ日が降り注ぎ、鳥の囀りが鼓膜を心地よく震わせる。
一度呼吸をすれば、精神が自然と落ち着いていくのが、手に取るように分かるこの場所こそ、セレナとアイナの故郷、【セイント孤児院】だ。
俺に続いて、セレナとアイナも車から降りる。
アイナ「ん~ッ!
なつかしい匂いね。」
セレナ「はぁ~。
なんか、帰ってきたって感じです!」
遼「中、入ろうや。」
俺はそう言って、扉に親指を向けた。
すると、セレナとアイナが扉に近づき、2人揃ってノックをした。
人が出てくるのを待っていると……
~♪~~♪
遼「……。
お前ら先に入っといて。」
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