My Sweet Home…

5/17
前へ
/20ページ
次へ
俺は、片手でハンドルを握りながら、携帯電話の応答ボタンを押した。 遼『やぁ、ベイビー。』 ニーナ『ハ~イ、遼ちゃん。 調子はどう?』 遼『絶不調。 慰めてくれる?』 ニーナ『あん、その気もないのにそんな事言って。 本当、意地悪な男。』 一通り、お互いに変わりがないことを確認できた所で、本題へと移る。 この携帯電話に、誰かから電話がかかってくるということは、仕事が舞い込んできたのと同義なのだ。 遼『で、ご用件は?』 俺は、助手席のダッシュボードに手を伸ばして、中にある手帳とペンを取り出す。 セレナ「ッ……///」 ニーナ『消してほしい人がいるの。』 遼『1人か?』 ニーナ『えぇ。 詳しくは、会ってから話しましょう。』 遼『明後日でえぇか? 今日と明日は、予定あるんや。』 ニーナ『じゃあ、明後日の午前10時、【海鳥】のテラス席にいるわ。』 遼『了解。』 ニーナ『じゃあね、遼ちゃん。 愛してるわ。』 遼『あぁ、俺もや。 じゃあな。』 電話を切った俺は、左手でハンドルを握りながら、手帳に予定を書き加え、またダッシュボードへと手帳を戻した。 アイナ「仕事?」 遼「おぅ。 それより、もうすぐ着くで。」 ナビには、目的地まで後1.7kmと表示されている。 セレナ「早く、みんなに会いたいです!」 アイナ「本当、久しぶりよねぇ。」 久々の帰郷に、2人とも自然と笑顔になる。 そして、1つの建物が木の隙間から、少しだけ確認できた。 森の入口付近に建てられたそれの見た目は、学校というより、教会に酷似している。 建物の扉の左横に車を停めた俺は、外に出た。 緑の葉を、元気いっぱいに生い茂らせた木々の隙間からは、暖かな木漏れ日が降り注ぎ、鳥の囀りが鼓膜を心地よく震わせる。 一度呼吸をすれば、精神が自然と落ち着いていくのが、手に取るように分かるこの場所こそ、セレナとアイナの故郷、【セイント孤児院】だ。 俺に続いて、セレナとアイナも車から降りる。 アイナ「ん~ッ! なつかしい匂いね。」 セレナ「はぁ~。 なんか、帰ってきたって感じです!」 遼「中、入ろうや。」 俺はそう言って、扉に親指を向けた。 すると、セレナとアイナが扉に近づき、2人揃ってノックをした。 人が出てくるのを待っていると…… ~♪~~♪ 遼「……。 お前ら先に入っといて。」
/20ページ

最初のコメントを投稿しよう!

40人が本棚に入れています
本棚に追加