祈りが蘇る日……なぜか運動会w

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「それで、 休日に人を呼び出して、 何のようなんだ?、女男?」 呼び出された状況も全く理解していない ような口ぶりに皆溜め息をつき、 「全く、 アンタ苗字変わってたから結婚は出来たん だろうけど、 変わんないわね、全然。 しかも鬼がわらなんて呼ばれてるなんて 立派な教育者が聞いて呆れるわ。」 「待て、女男、 何のことだ?」 本気でピンと来てない様子の鬼がわらに ママは更に深い溜め息をついて、 「あ、そっか、 面と向かっては言えないから、 陰で呼ばれてるんだ、鬼がわらって。 まあいいわ、 言っとくけど、 アタシの名前は女男じゃありません。 アンタがその呼び方続ける限り アタシもアンタのこと男女って呼ぶから。 大体現役の教師がこんなコンプライアンスに 抵触するような人の呼び方して、 まかり通るって本当にこの島の学校教育って どうなってるんだか。 まあ、アンタみたいなのが教頭やれてるんだから大したこたないわね、着実に。 まあ、立ち話も何だから本殿に入ってよ。」 ママがさりげなく神社の中に促すと、 いつの間にか、 「うおっ!?、」 と、いう驚嘆の声と共に、 鬼がわらの姿が忽然と消えた。 「あんな人、 自分の母とは思いたくないです。」 先日落とし穴を掘るメンバーの中に 鬼がわらの実の娘と息子が加わっている ことを耳にしたママは、 慌ててそこに駆け付けたが、 「あ、 釜石先生でいらっしゃいますか、 はじめまして、お噂はかねがね、 川良でございます。」 「はじめまして。」 鬼がわらの子供とは思えないほど 丁重なご挨拶を頂戴したママは、 面食らい、 「これはこれは丁寧なご挨拶、 ありがとうございます。 お母様とは学校の同期で、 しばらく勤務先もご一緒してましたけど わたくし早いとこその世界から足を 洗いましたもんで、 大したことはいたしてませんが……。」 「いえいえ、 釜石先生のことはとても素晴らしい 先生でいらしたことは、 生徒だけでなく先生方からもよく お話しを伺ってました。 本当に生徒に寄り添う優しい先生で いらしたと。 いらっしゃらなくなったことを 残念がる方から何度かお話しも伺ってますし。 気になりましたのは、 ひょっとしたら、うちの母親のせいで お辞めになってしまったのではという 聞き捨てならない噂も聞きましたので 申し訳なく感じておりました。」 ママは一旦遠い目をし、 「んー?、 アタシが辞めたのはこの自由な性格のせいが一番の原因だから、 あまり気になさらないでね、 この話を伺うってことは お二人ともお母様の願い通り 教職員の道へ進まれたのかしら。」 ママが気になって尋ねると、 「実は、 母親から言われるまま私も弟も 一旦教職員の道へ進みましたが、 母親のせいで生徒も先生も沢山の 人が苦しめられていることを知り、 二人とも、辞めました。」 「そんな……。」 「いえ、 必要以上に厳しく育てられたことに対し 母親は教育の場や家庭で自分の思うとおり 振る舞っていることも許せませんでしたし、 教職に誇りを持っていましたが 周りに申し訳ないですし、 恥ずかしくて同じ道はたどれません。 今日ここに穴を掘りに来たのも 身内として罪滅ぼしと、 母親をできれば皆のために 本当に土に埋めたい気持ちが 湧き上がったためです。 元教育者としても 家族としても許せませんから。 父との離婚にも体裁が悪いって 中々応じて貰えませんし、 いろいろ皆の話を伺うと 沢山の人に申し訳なくて。」 誰よりも熱心に穴を掘っていた 娘と息子のきっぱりとした表情に きっとここまでに来るまで 周りからいろいろ言われたり とんでもない思いや出来事で苦労させられて 来たのだろう、 この姉弟の醸し出す空気と行いに ママは圧倒されるばかりだった。 鬼がわらはカンカンで、 首を穴から出すと、 「だ、誰だ!、 穴掘った奴は! ただじゃ置かないからな!」 と叫んでいると、 「恨むんならアタシを恨みな。 アタシが許可したんだから。」 そう庇ったママの後ろにゾロゾロと、 いつの間にか我が娘と息子をはじめ、 アリやヒロシたちの被害を受けた生徒たち、 そして辞めるように促した教職員たちが、 鬼がわらの落ちた穴をぞろりと囲んだ。 「な、何なのあんたたち!?」
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