祈りが蘇る日……なぜか運動会w

28/30
326人が本棚に入れています
本棚に追加
/1278ページ
「うーん、 誰か良からぬことを考えてるのかなあ? でも夏輝ちゃん、 沢野っちと違って、誰かに恨まれるような こともしないから、 その線はちがうよね。」 今日は飲み物をよく噴き出しそうになる…… 夏輝はかろうじて今回は逃れたが、 「ところでかげたんはさっきから 何をやっているの?」 「うん、 アリちゃんたちの学校の先生方、 退職者がものすごく多くって、 ひょっとしたら原因はその 鬼がわらごんぞうって人が……。」 「かげたん、 ごんぞうさん、どっから来たのかなあ?」 「あ、ごめん、 何やら勝手に下の名前をごんぞうで 特定しちゃった。」 カゲヤマが苦笑すると、夏輝もつられて 苦笑しながら、 「まあ、ごんぞうって響きは、 鬼がわらって名前と相性よさそうだけどね。 ひょっとして生徒だけでなく先生方の方の 被害者もサーチしてるの?」 夏輝の言葉にうなずき、カゲヤマが、 「そうなの。 矢島と手分けしていろいろ調べて。 ここの小学校、 ダントツ先生方の離職率が高いのは 鬼がわら先生のせいだって言われてる らしくて、 子供の言うことってうやむやにする先生 らしいから、 言い逃れができないよう、大人の証言も 取りたいって思って。 それで今、その辞めた先生方に連絡を ママのお知り合いの方々からとってもらったら。」 「もらったら?」 カゲヤマの話が止まったのが気になり 夏輝が聞き返すと、 カゲヤマはちょっと困った顔をしながら さっき沢野に送ってもらった現場の画像を 夏輝に見せると、 ちょっと前はアリたち子供たちだけが穴を 掘っていたのに、 今度は連絡をもらった大人たち、 「鬼がわら被害者の会・教職員班」が たちまち駆け付け、子供たちを助けながら どんどん穴を増やしているのだ。 人も穴もどんどん、どんどん増えていく。 中には共に鬼がわらから被害を受けていた 担任と子供たちの涙の再会もあるようで、 喜びながら力を合わせて穴を掘る風景も 見られる。 年代問わず共通意識を持った集団の 団結力はものすごいものがあり、 夏輝は画像に釘付けになり、 しばしポカーンとしていた。 「この鬼がわら先生って、 どれだけ憎まれてるんだか?」 カゲヤマも深い溜め息をつき、 「うーん、 今のところ島内で一番嫌われてるかも。 土左衛門さんの不人気をはるかに 振り切ってるもん、 気が済むまで掘って、 少しは皆の気持ちが落ち着いたらいいかも。」 「そうだね。 しかし小学校の多感な時期に そんなイヤな思いをするなんて、 皆、かわいそうだったね。」 「本当に。 未だに先生の怒声の空耳を聞く子が いるみたいなの。」 「悲惨すぎだよ!」 翌日の日曜、とうとう神社での話し合いに、 学校からの車が神社前に到着した。 父兄代表で、多岐川、カゲヤマ、矢島に夏輝、黒澤に蔵元 その上にママと沢野が待っていたが、 その後部座席から降り立ったのは、 何と40~50代のやせぎすの厳しそうな 女性だった。 カゲヤマは目をまん丸にして、 多岐川にこっそり、 「た、多岐川先輩、 鬼がわら先生って、女性?」 「そうよ、でも手強いから用心して。」 その鬼がわらは、 ママを見つけるなり、 「何で女男がいるんだ?」 「鬼がわらなんてあだ名かついてる 男女に、 いろいろ言われたかないわよ。 相変わらずね。」 「互いにな。」
/1278ページ

最初のコメントを投稿しよう!