祈りが蘇る日……なぜか運動会w

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ママは鬼がわらが到着する前に、 ちょっと昔……いや随分昔のことを 思い出していた。 ここの隣町に、俗にいう 良家のお嬢様お坊ちゃまが幼稚園から 付属の大学まで通う「清雲学園」という 私立があるが、 一応ママも幼少から通っており、 卒業後にそのまま母校の高校教師となった。 言葉はすでにオネエ言葉だったが、 学生や同僚にも受けが良く、それなりに 充実した教師生活を送っていた。 その時、小学部で何かと問題になっていたのが今の結婚する前の川良であり、 ママと同じように幼少からこの学校に通い 元々県の教育関係のお偉いの親類だった 彼女は、 過分なエリート意識や周囲の忖度勘定の 中、コネで母校の小学部の教師となり、 その頃からいろいろと問題行動のことは 聞いていた。 教育やしつけと言う名で厳しい指導を 行ったり、差別をしたり、 学園の質の向上を謳い、 特に自分の気に入らない生徒や教師にも 厳しい態度や自分の人脈を使い、 学校から追い出したりすることを 話はよく聞いていた。 ママはそれに、自分の思い通りに行かない 苛立ちや人間関係の上手くいかなさを 八つ当たりしているのも入っていると 踏んでいたが。 かく言うママも、 この鬼がわらには女性言葉のせいか 「女男」と呼ばれていたが、 学校の人材不足は今も昔も変わらず、 ママも特に小学部が急に辞める教師が 多かったため、よく手伝いに行っていたが、 小学部の生徒や同僚の教師たちに 「釜石先生みたいに物腰の柔らかくて 丁寧な教育姿勢の先生がいい」 「釜石先生みたいな優しい先生に習いたい」 という声が多く出たため、 直接学部長にとオファーもきたが、 ママは丁重にお断りし続けた。 鬼がわらのやっかみがすごかったのだ。 「アンタなんて人受けのいい単なる 女男じゃん! 何でアンタなんかを見習わなきゃなんないの!」 「知らないわよ、 アアタこそその攻撃的な態度は 生徒や教師にもストレスを与えるから もう少し改めないと!」 学生の時からだったが、 顔を見る度しつこく絡んでくる鬼がわらが 鬱陶しく、 多分鬼がわらが本命として狙っていた ママの大の仲良しのたくちゃん(あずみの父 後に教育関係のお偉いさん)に、学校一の 性格よしで才色兼備の後のたくちゃんの奥様と結びつけたのが怒りを買ったのか、 嫌がらせレベルで絡まれることに ママはムダを感じていた。 人のことを「女男」扱いしてくるが 「男女」にいろいろ言われる必要はないし ましてやこんな人の悪口ばっかりの 醜さがにじみ出ている心身不美人は、 たくちゃんなんて似合うはずがないし、 自分のことは分かっていないのに 教育関係のハイスペック男子を追いかけ 回しているようだし、 今は学園長の息子の川良氏に親類から 圧をかけお見合いを持ちかけているらしいが、 こんな生徒や同僚を幸せにすることなど 頭の片隅にもない人間が、 教育者の皮を被って出世や権力を握るために 周囲を巻き込んでいく、 それに対してこんな人間をのさばらせて いくもの申すことが出来ない学校にも 嫌気が差し、 気晴らしでよく行っていたオカマバーの ママの引退を気に、この偏見の多い世界を スタンダードにするために極めていこうと スッパリと跡継ぎをしたのだった。 鬼がわらは思い通りに学園長の妻として 入り込むことは出来たが、 先日鬼がわらの近況を調べると 夫婦の関係性はすごぶる悪く、 教職員や生徒にひいきの激しい鬼がわらは 経営・学校運営からは退陣させられた ことをたくちゃんから聞き、 長く別居状態と言うこともうなずけていた。 それに納得が行かずこちらの島にコネを使い 職場を移して、 変わらない自分の考えを相変わらず 生徒や同僚に押し付け続けていたのだった。 「男なんて当てにならない、 大事なのは権力、 権力があれば何もかもが思い通りなる。 離れている子供たちもきっと理解して 権力を作って何もかも思い通りになることを あとで私に感謝するはず。 せっかく学園のレベルを向上するために 貢献してきた私を無下にしたがって! 見てなさい、 この学校を県一のハイレベル校に のし上げてやるから! その為には力のある親や生徒、 教職員を集めてレベルを上げて 余計なモノを切る!」 などと酒の席で大騒ぎしていた話を こいつ正気かと思ったと、 たくちゃんが情報を仕入れてくれていたが、 「いつか切られるのは、 お前だっつーの」 と、エルドラドで飲みながら 笑っていたたくちゃんの顔を思い出しながら ママは今、目の前でさんざん穴を掘った者に 毒づいている、 自分の娘や息子、 生徒や同僚が掘った落とし穴にハマっている 呑気な鬼がわらを無表情で見下ろしていた。 「何がハイレベルな学校めざすだか。 人としても人間としても 低レベルな人間が出来るわけないでしょ。」 ママは呆れながら、そうつぶやいた。
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